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夫妻肺片

fū qī fèi piān
Husband and wife's lung slice
牛の内臓の四川風ソース和え

fuqifeipian


四川料理の前菜。この名前は中国の故事から来ている。中国の故事と聞くと千年ほど前のことかと思うが、なんのことはない1930年代のことだ。なんでも成 都に住んでいた回族の夫婦が、捨てられていた牛の内臓を使って屋台料理を作ったらそれが大ヒットした。最初は「夫妻废片」(「廃」の字)だったそうだが、 イメージがよくないので「肺」に変えた。しかしいまでは肺はあまり使われず、ハツ、胃、タン、頭肉などのモツが中心となっている。いまではこの名前のレス トランのチェーンを展開している。

ということらしいが、上の写真を撮った「知 音食堂」では、メニューに「牛の胃と豚の舌の四川風辛みソース合え」とある。上記の故事を私が理解した範囲では、要するに回族は豚を 食わないし、牛も肉の部分だけを食べて内臓は捨てるから、大量の牛の内臓が安く手に入った、というのがこの料理のそもそもの発祥条件なわけだから、豚が入 るのは妙なことなのかもしれないが、まあ内臓ならけっこうなんでもいいのかも。ちなみにこのエピソードは日本における現代的モツ料理の発祥と重なる点があ りそうだ。日本ではもともと肉食の文化が根付いていなかったこともあり、傷みやすい内臓肉はあまり流通していなかった。そうやって捨てられた内臓を屠畜業 者が調理して売った、というエピソードは日本にも残っている。また、日本での「ホルモン料理」の最初の流行も1930年代頃にあったようだ。

傷みやすく臭い部位だから、強い香辛料入りの汁でがんがんと煮る。それを冷やし、殺菌力の強そうな香辛料をぶっかけて提供する保存食である。「知音食堂」 ではこの料理はそんなに辛くない。辛さを表すメニューの唐辛子のマークは、最上級の「水煮牛肉」などが3つなのに対し、こちらは2つ。辛さよりもいろんな 香辛料の複雑な味が記憶に残るおいしいおつまみ・前菜である。

なお、CNN のこの記事によると、この料理の英語名の"Husband and wife's lung slice"はあまりにエキゾチックなので、北京オリンピックの開催前に中国政府がこの手の料理名を変更するよう提案したとのこと。一緒に出ている "Chicken without sexual life"は「童子鶏」で、要するに交尾をしたことがない雄の若鶏のこと。この2つはちょっと性質が違うように思う。いずれにせよ、材料名と調理法の組み 合わせで名前が付いていることの多い中国料理の中で、この「夫妻肺片」は目を惹く名前で面白い。

作り方・レシピ

これを家庭で作るのは面倒だと思うが、煮るために使うスープの材料として八角を初めとする「中国料理で使われるいろんな香辛料」を使う点を除けば、普通の 「モツ煮込み」を作るのとそんなに手順は変わらないように思う。煮込んだ後にラー油などをベースにしたソースで合え、最後にネギと七味唐辛子の代わりに香 菜と花椒をかける。
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